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Channel: 円周率近似値の日に生まれて理系じゃないわけないだろ! - knifeのblog
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3辺が整数の直角三角形の奇妙な性質

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実はこれが、私が小学校から長年取り組んでいた問題でもある。


皆さん、ピタゴラスの定理(三平方の定理)はご存知でしょうか。

中学に入って、初めて数学らしいというか、定理というものを覚えることとなります。

直角を挟む2辺をそれぞれa、b、斜辺をcとすると、

a2+b2=c2

が成り立つというもの。

これは、

a, b, c∈R

で成り立つ性質ではあるが、あえて

a, b, c∈N

で考えることする。

この3辺が自然数の直角三角形をピタゴラス三角形、3辺(a, b, c)の組をピタゴラス数と呼ぶ。


この研究を小学校の高学年くらいからやっていたわけです。

取っ掛かりは、フェルマーの最終定理が証明されたということを、従兄から聞いたことだったと思う。

フェルマーの最終定理は、

Xn+Yn=Zn

n>2成り立つX, Y, Zは存在しないというもの。

n=2のとき、つまりピタゴラスの定理である。

というわけで、ピタゴラス三角形は無限に存在するのか、ということを考える。


これに関しては、かのユークリッドはこう記している。

m, n∈N
m>n

としたとき、

a=m2-n2
b=2mn
c=m2+n2

と表せ、(m, n)の組は無限に存在するので、(a, b, c)の組も無限に存在する。


確かに、無限に存在することの証明になっている。


でも、無限にもいろいろある。

(3, 4, 5), (6, 8, 10), (9, 12, 15), ....

のように、比が同じものが無限に存在するが、ここでは意味がない。

私が欲しいピタゴラス数は、

gcd(a, b, c)=1

のとき、つまり既約ピタゴラス数である。

自然数が無限に存在するというのと、素数が無限に存在するというのでは、意味が全く違うだろうということです。


ユークリッドの方法では、既約でないものも登場してしまう。


そこで、先の方法に条件を1つ加え、

m, n∈N
m>n
gcd(m, n)=1

としたとき、

a=m2-n2
b=2mn
c=m2+n2

とする。

gcd(m, n)=1、つまりmとnは互いに素であれば、gcd(a, b, c)=1、つまりaとbとcも互いに素になるということ。

確かにその通りである。

さすがユークリッドの互除法というものを作り出しただけあって、理にかなっている。


ただ、私も若かったんだろう。

これだけでは納得がいかないという思いがあった。

そうこうしているうちに、小学生だった私も、中学生、高校生、大学生となっていた。

大学で数学を専攻するも、純粋数学よりも、応用数学、というかコンピュータにのめり込んでしまった。

そんなある日、行列の計算を表計算ソフト(当時はLotus 1-2-3)で計算させていた。

すると、偶然の出来事から、ピタゴラス数の性質を見つけてしまう。



見つけてしまったのは、P、Q、PQである。


まず、前置きは、ピタゴラス数(a, b, c)があるよってこと。

g=1のとき、既約ピタゴラス数だよってこと。


行列Pは、1と2と3で偶然出来た対称行列を、いろいろいじくり倒した結果、1列と2列を負にしたもの。

対称性は失われたが、逆行列が等しいということ。

まぁ、いじくり倒した理由は、逆行列を等しくしたかったからなんですけどね。


行列Qは、ピタゴラス数の符号を変えて、列に入れたもの。

a, b, cの3個なので、23=8で、8列あっても良いのだが、cを負にする意味がなかったので、半分の4列となった。


PとQの積、PQの列に新たなピタゴラス数が生み出されるということ。

但し、a0, b0が負になることがありますが、ピタゴラス数とするときは、負符号を取って正として考えます。


この性質を見つけたときには、しばらく眠れませんでした。


証明は簡単で、行列式を計算するだけ。


さて、この行列の掛け算で、無限に存在するピタゴラス数の全体像が見えてきます。


(3, 4, 5)ピタゴラス数を根とする3進木構造です。

ある(3, 4, 5)以外のピタゴラス数(a, b, c)には、
親ピタゴラス数(a0, b0, c0)、
三つ子ピタゴラス数(a1, b1, c1), (a2, b2, c2), (a3, b3, c3)
が必ず存在するということ。

この3進木構造は、いろいろと遺伝的に継承されます。

例えば、既約ピタゴラス数でaを奇数、bを偶数と固定したら、親も三つ子も同じように固定されます。

例えば、ピタゴラス数が最小公倍数gを持つと、親や三つ子の最小公倍数もgとなる。

このことから、既約ピタゴラス数であれば、親も三つ子も既約ピタゴラス数となって、木全体が既約ピタゴラス数の集合となる。


他にも面白い性質があって、

三つ子も、長男(a1, b1, c1)、次男(a2, b2, c2)、三男(a3, b3, c3)という関係だとすると、

長男から親を計算すると、aが負になる。

次男から親を計算すると、bが負になる。

三男から親を計算すると、a、bが負になる。

というように、自分自身が三つ子の何番目なのかも、親を計算することで、知ることが可能である。


まだまだ、いろいろな性質があると思うので、各自探してみてくださし。



さて、これで終わらせてしまうのは勿体無い。

ユークリッドが示したmとnが互いに素なら、aとbとcも互いに素ということ。

これから、逆方向に考えて、ピタゴラス数の行列式が出来るならば、互いに素の行列式も出来るのではないか、ということ。



出来ましたね。

互いに素なm, nも3進木構造となります。

ここまで解ったら、ピタゴラス数の研究熱もかなり冷めてしまったんだよね。

ひさしぶりに思い出しながら書いてみました。


そうそう、先の記事の3辺が奇数の三角形ですが、今回のピタゴラス三角形はaかbのどちらか一方は偶数になってしまうので、成り立ちません。

そもそも直角三角形なので、面積はab/2と自然数になり、小数部は0です。


ではでは


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