日本語は難しい。
日本人は無意識に連濁を使っている。
(実は、先の記事にも関係している。)
連濁とはなんぞや?
例えば、
山(やま)+寺(てら)=山寺(やまでら)
のように、連なると後者の語頭が濁音に変化する。
濁音は、が行、ざ行、だ行、ば行、半濁音は、ぱ行。
山寺を、「やまでら」と読むほうが自然で、一般的で、「やまてら」では不自然で、一般的ではないと日本人の感覚としてあるのだろう。
日本人は無意識に連濁をするものと、しないものとに分けているので、ある一定のルールが存在するのではないだろうかということで考えてみた。
当然ルールには例外は付き物で、例外のないルールは存在しないことを前提として話を進めますよ。
どちらを例外とするのかも、怪しいところではあるので、一般的には連濁するものと考え、何らかの理由で連濁が阻止されたという様に考えてみる。
ルールは、ある程度の語彙を集めてみて、適当なルールを見つけて分類したに過ぎないので、決定的な根拠には欠ける。
出来るだけ例外の少ないものからあげていく。
【連濁阻止ルール1】
後者の語頭が濁音の場合は、濁音のまま。
これは、濁音をさらに濁音にすることは出来ないので、明らかなルールだとも言える。
唯一例外がないルールかもしれません。凹(おう)+凸(とつ)=凹凸(おうとつ)
【連濁阻止ルール2】
並列や同等なもの同士は連濁しない。
読み(よみ)+書き(かき)=読み書き(よみかき)
但し(ただし)+書き(かき)=但し書き(ただしがき) ←並列でないから連濁
飲み(のみ)+食い(くい)=飲み食い(のみくい)
やけ+食い(くい)=やけ食い(やけぐい) ←並列でないから連濁
好き(すき)+嫌い(きらい)=好き嫌い(すききらい)
食わず(くわず)+嫌い(きらい)=食わず嫌い(くわずぎらい) ←並列でないから連濁
売り(うり)+買い(かい)=売り買い(うりかい)
大人(おとな)+買い(かい)=大人買い(おとながい) ←並列でないから連濁
白(しろ)+黒(くろ)=白黒(しろくろ)
紅(こう)+白(はく)=紅白(こうはく)
色(いろ)+白(しろ)=色白(いろじろ) ←並列でないから連濁
生(セイ)+死(シ)=生死(セイシ)
犬(いぬ)+死(しぬ)=犬死(いぬじに)=犬死に(いぬじに) ←並列でないから連濁
無駄(むだ)+死(しぬ)=無駄死に(むだじに) ←並列でないから連濁
これは例外が少なそうであるが、例外がないわけではない。
酢(す)+醤油(しょうゆ)=酢醤油(すじょうゆ)
ポン酢(ぽんず)+醤油(しょうゆ)=ポン酢醤油(ぽんずしょうゆ)
並列、同等と言いつつも、言葉の響きや何らかの理由で、前後があるわけですから、例外はあるのだろう。
【連濁阻止ルール3】
前者の語尾が濁音の場合、後者の語頭は濁らずに清音。
長(なが)+島(しま)=長島(ながしま)
中(なか)+島(しま)=中島(なかじま) ←逆は連濁する例
鍋(なべ)+掴み(つかみ)=鍋掴み(なべつかみ)
鷲(わし)+掴み(つかみ)=鷲掴み(わしづかみ) ←逆は連濁する例
恥(はじ)+曝し(さらし)=恥曝し(はじさらし)
雨(あま)+曝し(さらし)=雨曝し(あまざらし) ←逆は連濁する例
【連濁ルール3】
前者の語尾が濁音でも、後者の名詞を前者が形容や補足や限定している場合は、連濁する。
蕎麦(そば)+焼酎(しょうちゅう)=蕎麦焼酎(そばじょうちゅう)
芋(いも)+焼酎(しょうちゅう)=芋焼酎(いもじょうちゅう)
腕(うで)+時計(とけい)=腕時計(うでどけい)
柱(はしら)+時計(とけい)=柱時計(はしらどけい)
麦(むぎ)+畑(はたけ)=麦畑(むぎばたけ)
葱(ねぎ)+畑(はたけ)=葱畑(ねぎばたけ)
【連濁阻止ルール4】
後者がカタカナで表されるような外来語や、音読みは、連濁しない。
空き(あき)+缶(カン)=空き缶(あきカン)
【連濁阻止例外ルール4-1】
但し、古く日本に伝来した外来語は、カタカナ語であっても連濁を起こすこともある。
雨(あま)+合羽(カッパ)=雨合羽(あまガッパ)
いろは+カルタ=いろはガルタ
【連濁阻止例外ルール4-2】
前者の語尾が「ん」で、後者が音読みの場合、音読みでも連濁する。
保健(ホケン)+所(ショ)=(ホケンジョ)
保育(ホイク)+所(ショ)=(ホイクショ)
昆(こん)+布(ふ)=昆布(こんぶ)
帆(はん)+布(ふ)=帆布(はんぷ)
毛(もう)+布(ふ)=毛布(もうふ)
敷(しき)+布(ふ)=敷布(しきふ)
源(ゲン)+氏(シ)=源氏(ゲンジ)
平(ヘイ)+氏(シ)=平氏(ヘイシ)
賃(チン)+金(キン)=賃金(チンギン)
敷(しき)+金(キン)=敷金(しきキン)
礼(レイ)+金(キン)=礼金(レイキン)
【連濁ルール5-1】
前者の語尾が「つ」で「っ」に変化、または前者と後者を「っ」繋ぎ、後者の語頭が「は行」の場合、「ぱ行」に連濁する。
素(す)+っ+裸(はだか)=素っ裸(すっぱだか)
法(はっ)+被(ひ)=法被(はっぴ)
熱(ねつ)+風(ふう)=熱風(ねっぷう)
疾(しつ)+病(へい)=疾病(しっぺい)
滅(めつ)+法(ほう)=滅法(めっぽう)
合(かっ)+戦(せん)=合戦(かっせん) ←後者が「は行」でないから連濁しなかった?
【連濁ルール5-2】
前者の語尾が「ゃ」「ゅ」「ょ」の拗音で、後者の語頭が「は行」の場合、一般的に「ば行」に連濁するが、「ぱ行」に連濁する場合もある。
茶(ちゃ)+葉(は)=茶葉(ちゃば)
茶(ちゃ)+畑(はたけ)=茶畑(ちゃばたけ)
茶(ちゃ)+髪(はつ)=茶髪(ちゃぱつ) ←半濁音に連濁
【その他、未分類】
茶(ちゃ)+筒(つつ)=茶筒(ちゃづつ)
茶(ちゃ)+摘み(つみ)=茶摘み(ちゃつみ)
将棋(しょうぎ)+倒し(たおし)=将棋倒し(しょうぎだおし)
棒(ぼう)+倒し(たおし)=棒倒し(ぼうたおし)
ドミノ+倒し(たおし)=ドミノ倒し(ドミノたおし)
訓読み+音読み
足し(たし)+算(さん)=足し算(たしざん)
引き(ひき)+算(さん)=引き算(ひきざん)
掛け(かけ)+算(さん)=掛け算(かけざん)
割り(わり)+算(さん)=割り算(わりざん)
音読み+音読み
加(か)+算(さん)=加算(かさん) ←なぜ連濁しない?
減(げん)+算(さん)=減算(げんざん)
乗(じょう)+算(さん)=乗算(じょうざん)
除(じょ)+算(さん)=除算(じょざん)
口(くち)+癖(くせ)=口癖(くちぐせ)
寝(ね)+癖(くせ)=寝癖(ねぐせ)
手(て)+癖(くせ)=手癖(てくせ) ←なぜ連濁しない?
湯(ゆ)+冷まし(さまし)=湯冷まし(ゆざまし)
熱(ねつ)+冷まし(さまし)=熱冷まし(ねつさまし) ←なぜ連濁しない?
青(あお)+写真(しゃしん)=青写真(あおじゃしん)
顔(かお)+写真(しゃしん)=顔写真(かおじゃしん)
証明(しょうめい)+写真(しゃしん)=証明写真(しょうめいしゃしん)
日光(にっこう)+写真(しゃしん)=日光写真(にっこうしゃしん)
集合(しゅうごう)+写真(しゃしん)=集合写真(しゅうごうしゃしん)
卒業(そつぎょう)+写真(しゃしん)=卒業写真(そつぎょうしゃしん)
いろいろ、思いつくままにかき集めたんだけど、やっぱり言語学者でもない限り、理由付けは難しいものである。
もし、何らかのルールを知っていたら、教えてね。
ではでは