今日は名も無き定理を紹介します。
一般的に定理とは、ピタゴラスの定理のような発見者の名前を冠したものや、余弦定理のような利用する道具や方法の名前を冠するものである。
紹介したい定理は、
n次の整数係数多項式f(x)が、有理数解q/pを持つとき、pはanの、qはa0の、正または負の約数である。
というものです。
私が名前を知らないだけかもしれないが、この名も無き定理は、かなりのポテンシャルを持った定理である。
多項式の筆算による割り算という記事を書いたが、ある多項式の解を無作為に探すということに意味がなく、有理数解があるとするならば、この候補の中だけを探せばよく、この候補で見つからなければ有理数解は無いということでもある。
例えば、
f(x)=3x4+4x3-12x2+32=0
という整数係数多項式を因数分解するとき、
f(x)が有理数解p/qを持つとき、pは3の、qは32の、正または負の約数なので、
約数は、
3 = { 1, 3 }
32 = { 1, 2, 4, 8. 16, 32 }
これより有理数解q/pの候補は、
{ ±1, ±2, ±4, ±8, ±16, ±32, ±1/3, ±2/3, ±4/3, ±8/3, ±16/3, ±32/3 }
となる。
試してみると、f(-2)=0 がみつかる。
筆算で割り算して、
f(x)=(x+2)(3x3-2x2-8x+16)=0
g(x)=3x3-2x2-8x+16
同様に約数から候補を出して、試してみると、g(-2)=0 がみつかる。
筆算で割り算して、
f(x)=(x+2)2(3x2-8x+8)=0
h(x)=3x2-8x+8
判別式 D=b2-4ac=(-8)2-4*3*8=64-90=-32 より、h(x)は実数解を持たない。
よって、
3x4+4x3-12x2+32=(x+2)2(3x2-8x+8)
と因数分解が滞りなく行えるのである。
知っておいて損はないよね。
ではでは
↧
整数係数多項式の有理数解
↧