午後のひとときに数学の問題を解いてみる。
問題
円周率が3.05より大きいことを証明せよ。
これはいろいろ考えられて面白い問題である。
一般的なアプローチであれば、内接する正多角形の円周で調べるのが良さそうであろう。
例えば、半径rの円に内接する正六角形ならば、正六角形の外周は6rであるから、3.05より小さく証明にはならない。
正七角形では、360/7は計算しにくい。
そう考えると、正八角形が妥当そうである。
半径1の円に内接する正八角形の外周は、
8つの頂角45度の二等辺三角形の底辺の長さであり、
余弦定理より、底辺の長さは、
√(1+1-2cos45˚) = √(2-(√2))
2π > 8√(2-(√2))
π > 4√(2-(√2)) > 3.05
が示せればよい。
16(2-(√2)) > 3.05^2 = 9.3025
2-(√2) > 0.58140625
√2 < 1.415 より、
2-(√2) > 2-1.415 > 0.58140625
2-(√2) > 0.585 > 0.58140625
∴
π > 4√(2-√2)) > 3.5
Q.E.D.
よく、ここの計算で√2を1.414で計算しているものがあるが、それでは証明になってないと考える。
この手の解法で、角数を増やせば、精度は上がる。
もし、問題が3.06ではなく、3.1や3.14だったら、どうしますか?
3.1であれば、12角形で、2cos30˚ = √3
π^2 > 36*(2-(√3)) > 36*(2-1.733) > 3.1^2
π^2 > 36*(2-(√3)) > 9.612 > 9.61
3.14であれば、57角形以上にしなくてはなりません。
例えば、正多角形である必要はありません。
ピタゴラス数の 3^2+4^2 = 5^2 を利用し、半径5の円上の第一象限の座標(0,5),(3,4),(4,3),(5,0)を直線で繋げた距離を4倍してみる。
(0,5),(3,4)間は、√(3^2+1^2) = √10 = (√2)*(√5)
(3,4),(4,3)間は、√(1^2+1^2) = √2
(4,3),(5,0)間は、(√2)*(√5)
2*5*π > 4*(√2)*(1+2√5)
π > 2√2*(1+2√5)/5 > 3.05
を示せればよい。
√2 > 1.414, √5 > 2.236 より、
2*1.414*(1+2*2.236)/5 = 2.828*5.472/5 = 3.0949632 > 3.05
Q.E.D.
もっと他の方法を考えてみよう。
ライプニッツの公式
π/4 = 1-(1/3)+(1/5)-(1/7)+(1/9)-(1/11)+...
を使ってみる。
このままで使うと値が振動するので、2項ずつまとめて、
π/4 = (1-(1/3))+((1/5)-(1/7))+((1/9)-(1/11))+...
π = 4*( (1-(1/3))+((1/5)-(1/7))+((1/9)-(1/11))+... ) > 3.05
のように増加関数として、下から収束するように考える。
4*(1-(1/3)) = 8/3
4*((1/5)-(1/7)) = 8/35, 累計 304/105
4*((1/9)-(1/11)) = 8/99, 累計 10312/3465
4*((1/13)-(1/15)) = 8/195, 累計 135904/45045
4*((1/17)-(1/19)) = 8/323, 累計 44257352/14549535
4*((1/21)-(1/23)) = 8/483, 累計 1023461776/334639305 > 3.05
Q.E.D.
ウォリスの公式
π/2 = (2/1)*(2/3)*(4/3)*(4/5)*(6/5)*(6/7)*...
これも、2項ずつまとめて、
π/2 = ((2/1)*(2/3)) * ((4/3)*(4/5)) * ((6/5)*(6/7)) *...
増加関数として、下から収束するように考える
(2/1)*(2/3) = 4/3, 累計 2*4/3
(4/3)*(4/5) = 16/15, 累計 2*64/45
(6/5)*(6/7) = 36/35, 累計 2*256/157
(8/7)*(8/9) = 64/63, 累計 2*16384/11025
(10/9)*(10/11) = 100/99, 累計 2*65536/43659
(12/11)*(12/13) = 144/143, 累計 2*1048576/693693
(14/13)*(14/15) = 196/195, 累計 2*4194304/2760615
(16/15)*(16/17) = 256/255, 累計 2*1073741824/703956825 > 3.05
Q.E.D.
ライプニッツより、ウォリスのほうが収束が遅かったようです。
マクローリン展開
cos(x) = Σ[k=0 to ∞] (-1^k)*(x^2k)/(2k!)
= 1-x^2/2!+x^4/4!-x^6/6!+x^8/8!-x^10/10!+...
これも、2項ずつまとめて、
cos(x) = (1-x^2/2!)+(x^4/4!-x^6/6!)+(x^8/8!-x^10/10!)+...
と増加関数として、
cos(x) > 1-x^2/2
というマクローリン型不等式を得る。
例えば、x = π/4 を代入すると、
cos(π/4) > 1-(π/4)^2/2
√2/2 > 1-π^2/32
π^2/32 > 1-√2/2
π^2 > 32*(1-√2/2)
√2 < 1.415 より、
π^2 > 32*(1-√2/2) > 32*(1-1.415/2) = 9.36 > 3.05^2 = 9.3025
例えば、x = π/6 を代入すると、
cos(π/6) > 1-(π/6)^2/2
√3/2 > 1-π^2/72
π^2/72 > 1-√3/2
π^2 > 72*(1-√3/2)
π^2 > 72-36√3
√3 < 1.737 より、
π^2 > 72+36√3 > 72-36*1.737 = 9.468 > 3.05^2 = 9.3025
と、正多角形と同様に精度を考えねばならないだろうから、cos(x)の計算しやすい妥当なものを考える必要があるだろう。
もう少し項を増やして、精度を高めることも可能ではある。
考えたらキリがないので、とりあえずこの辺で。
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東大 03
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