最近、私のブログに数列というキーワードでの検索が多いようなので、今までに書いていない数列について書いてみようと思う。
たまには、数楽ネタを書かないと、らしくないみたいなのでw。
表題の調和数列とは何か?
以前、等差数列、等比数列、といったものを書いたが、調和数列とは各項の逆数を取ると等差数列になる数列である。
例えば、
1/1, 1/2, 1/3, …
というものです。
無限等差数列の和(等差級数)は発散するとか、比が1未満の無限等比数列の和(等比級数)は収束するなんてことも書きましたね。
では、無限調和数列の和(調和級数)はどうなるのでしょうか?
先の調和数列を例に取ってみましょう。
10^n個までで、どのような和になるのか計算してみると、
Σ{n=1, 10^0} 1/n = 1
Σ{n=1, 10^1} 1/n < 3
Σ{n=1, 10^2} 1/n < 6
Σ{n=1, 10^3} 1/n < 8
Σ{n=1, 10^4} 1/n < 10
…
と、とても変化が遅いので、収束するのかなと思うかもしれませんが、実は発散します。
証明してみましょう。
A = 1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + …
1/1を移項
A - 1/1 = 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + …
右辺の項を、2の冪乗個ずつ、つまり1個、2個、4個、8個、…のようにまとめる
A - 1/1 = (1/2) + (1/3+1/4) + (1/5+1/6+1/7+1/8) + …
それぞれの括弧内に着目すると、括弧内の一番右の項が一番小さいので、その項を括弧内の項数倍したものを不等式で表すと、
A - 1/1 = (1/2) + (1/3+1/4) + (1/5+1/6+1/7+1/8) + …
> (1/2) + (2×1/4) + (4×1/8) + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
と不等式の右辺が無限大に発散することがわかります。
不等号の向きから、左辺は右辺よりも大きいので、左辺も無限大に発散していることになります。
面白い証明方法ですよね。
まぁ、この調和数列だけが例外で、他は収束するんじゃない?なんて思うかもしれません。
例えば、初項3、公差3の等差数列を分母に持つ調和級数Bを考えると、、
B = 1/3 + 1/6 + 1/9 + 1/12 + 1/15 + …
これの証明は簡単です。
両辺を3倍すれば、
3B = 3/3 + 3/6 + 3/9 + 3/12 + 3/15 + …
= 1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + …
となって、既に証明済みです。
初項3、公差5の等差数列を分母に持つ調和級数Cを考えると、
C = 1/3 + 1/8 + 1/13 + 1/18 + 1/23 + …
両辺を5倍する。
5C = 5/3 + 5/8 + 5/13 + 5/18 + 5/23 + …
5/3を移項する。
5C - 5/3 = 5/8 + 5/13 + 5/18 + 5/23 + …
右辺を2の冪乗個ずつにまとめる。
5C - 5/3 = (5/8) + (5/13+5/18) + (5/23+5/28+5/33+5/38) + …
右辺の各括弧内の最大分母に2を加えたものの括弧内の項数倍とを不等式で表すと、
5C - 5/3 > (5/10) + (2×5/20) + (4×5/40) + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
//
初項3、公差7の等差数列を分母に持つ調和級数Dを考えると、
D = 1/3 + 1/10 + 1/17 + 1/24 + 1/31 + …
両辺を7倍する。
7D = 7/3 + 7/10 + 7/17 + 7/24 + 7/31 + …
7/3を移項する。
7D - 7/3 = 7/10 + 7/17 + 7/24 + 7/31 + …
右辺を2の冪乗個ずつにまとめる。
7D - 7/3 = (7/10) + (7/17+7/24) + (7/31+7/38+7/45+7/52) + …
右辺の各括弧内の最大分母に4を加えたものの括弧内の項数倍とを不等式で表すと、
7D - 7/3 = (7/14) + (2×7/28) + (4×7/56) + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
//
逆に、公差の方が初項より小さかったらどうでしょうか?
初項5、公差3の等差数列を分母に持つ調和級数Eを考えると、
E = 1/5 + 1/8 + 1/11 + 1/14 + 1/17 + …
両辺を3倍する。
3E = 3/5 + 3/8 + 3/11 + 3/14 + 3/17 + …
両辺を2の冪乗個ずつまとめる。
3E = (3/5) + (3/8+3/11) + (3/14+3/17+3/20+3/23) + …
右辺の各括弧内の最大分母に1を加えたものの括弧内の項数倍とを不等式で表すと、
3E > (3/6) + (2×3/12) + (4×3/24) + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
//
初項7、公差3の等差数列を分母に持つ調和級数Fを考えると、
F = 1/7 + 1/10 + 1/13 + 1/16 + 1/19 + …
両辺を3倍する。
3F = 3/7 + 3/10 + 3/13 + 3/16 + 3/19 + …
両辺に3/4を加える。
3F + 3/4 = 3/4 + 3/7 + 3/10 + 3/13 + 3/16 + 3/19 + …
右辺を2の冪乗個ずつまとめる。
3F + 3/4 = (3/4) + (3/7+3/10) + (3/13+3/16+3/19+3/22) + …
右辺の各括弧内の最大分母に2を加えたものの括弧内の項数倍とを不等式で表すと、
3F + 3/4 > (3/6) + (2×3/12) + (4×3/24) + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
//
初項11、公差3の等差数列を分母に持つ調和級数Gを考えると、
G = 1/11 + 1/14 + 1/17 + 1/20 + 1/23 + …
両辺を3倍する
3G = 3/11 + 3/14 + 3/17 + 3/20 + 3/23 + …
両辺に 3/5+3/8 を加える.
3G + 3/5 + 3/8 = 3/5 + 3/8 + 3/11 + 3/14 + 3/17 + 3/20 + 3/23 + …
右辺を2の冪乗個ずつまとめる。
3G + 3/5 + 3/8 = 3/5 + (3/8+3/11) + (3/14+3/17+3/20+3/23) + …
右辺の各括弧内の最大分母に1を加えたものの括弧内の項数倍とを不等式で表すと、
3G + 3/5 + 3/8 > (3/6) + (2×3/12) + (4×3/24) + …
//
十分例題は出たので、一般項で考えてみましょう。
初項a、公差dの等差数列を分母に持つ調和級数Hにおいて、
a = d のとき、
a < d のとき、
a > d のとき、
と場合分けして、証明すれば良いでしょう。
a = d のとき、
H = 1/(a+0d) + 1/(a+1d) + 1/(a+2d) + …
両辺をd倍すると、
dH = d/(a+0d) + d/(a+1d) + d/(a+2d) + …
= d/d + d/2d + d/3d + …
= 1/1 + 1/2 + 1/3 + …
となり、1/1を移項して、右辺を2の冪乗個ずつにまとめると、
dH - 1/1 = (1/2) + (1/3+1/4) + (1/5+1/6+1/7+1/8) + …
右辺の各括弧内の最小分数の項数倍とを不等式で表すと、
dH - 1/1 > (1/2) + (2×1/4) + (4×1/8) + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
よって、不等式の右辺は無限大に発散し、不等号の向きから左辺も無限大に発散する。
a < d のとき、
H = 1/(a+0d) + 1/(a+1d) + 1/(a+2d) + …
両辺をd倍すると、
dH = d/(a+0d) + d/(a+1d) + d/(a+2d) + …
d/(a+0d)を移行する
dH - d/(a+0d) = d/(a+1d) + d/(a+2d) + …
dH - d/(a+0d) = {d/(a+1d)} + {d/(a+2d)+d/(a+3d)} + {d/(a+4d)+d/(a+5d)+d/(a+6d)+d/(a+7d)} + …
右辺の各中括弧内の最小分数の分母に(d-a)を加えたものの項数倍とを不等式で表すと、
dH - d/(a+0d) > {d/2d} + {2・d/4d} + {4・d/8d} + … = (1/2) + (1/2) + (1/2) + …
よって、不等式の右辺は無限大に発散し、不等号の向きから左辺も無限大に発散する。
a > d のとき、
aがdと等しいか、dより小さくなるまでdで引いたものを、初項a'とすれば、
a' = d または a' < d となって、先の証明で証明済みである。
こんな感じかなぁ。
↧
調和数列の和
↧