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Channel: 円周率近似値の日に生まれて理系じゃないわけないだろ! - knifeのblog
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ガブリエルのラッパ

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午後のひとときに、数学に関連するパラドクスの一つを紹介します。



タイトルの『ガブリエルのラッパ』、もしくは『ガブリエルのホルン』、『ガブリエルのトランペット』、はたまたこの研究者である『トリチェリのトランペット』などと呼ばれている。

ガブリエルは、大天使ガブリエルのことで、ラッパ、ホルン、トランペットと表現に揺れがあるが、最後の審判に登場するラッパを想像していただけるとよいかと思います。

さて、数学の話しになるのですが、
ラッパにあたるものの図形を考えます。

 

y=
1
x

というグラフを考え、x = 0ではyが∞になってしまうので、x≧1の範囲だけを考えることとして、このグラフをx軸で回転させた図形をガブリエルのラッパとします。

ガブリエルのラッパの体積Vを求めると、

V=
lim
n→∞
n
1
 
π
x2
 dx=
lim
n→∞
π
n
1
 
1
x2
 dx=
lim
n→∞
π
1
x

n
1
lim
n→∞
π
1-
1
n

=π

という計算により、V=πであることが求まる。

ラッパの外側の表面積Sを求めたいが、面倒なので、Z軸方向にぺしゃんこにしたとして、第一象限の領域の面積を求めてみると、

S>
lim
n→∞
n
1
 
1
x
 dx=
lim
n→∞

log(x)
n
1
lim
n→∞
log(n)=∞

という計算により、表面積Sも∞となってしまう。


このガブリエルのラッパにペンキを塗るとしたら、ペンキはどれくらい必要かと考えると、∞に必要となってしまうが、ラッパの体積は高々有限のπである。

ラッパの内側も外側もラッパの厚みが限りなく0に近づけば、同じであるから、内側を塗るのにπもあれば余ってしまうわけで、外側もπあれば十分とも考えられ、ペンキの量が有限で済むならば、有限時間でペンキが塗れることになる。

なんとも不思議なパラドクスが出来上がる。

これは、数学的に考えると、ペンキの厚みも限りなく0に近づければ∞の表面積を塗ることは可能なのである。

な~んだ、数学の中だけでパラドクスが起きているのか。

というわけではない。
現実の世界に置き換えたとして、ガブリエルのラッパがあったとするならば、誤差はあるにしても、体積Vはπ、表面積Sは∞であることに変わりはない。
現実世界では、ペンキには少なからず厚みがあって、πという容量で内側を埋め尽くすことが出来るのに、外側も同じ容量のπではすべてを塗ることは出来ないという矛盾が発生する。

まぁ、現実世界に無限に長いものなんてのはないので、ガブリエルのラッパが存在しないので、一安心かな?

実際に時間が無限にあるならば、ガブリエルのラッパは作れるのだろうか。
例えば、円錐状のゴム風船があって、底面はカッチカチで変形しないが、他は伸縮自在であったならば、頂点を持って、無限に伸ばして上げれば、内容物の体積が変化しなければ、ガブリエルのラッパのようなものが作れるのかな。
まぁ、時間が無限にあるなんてことはないんだけれどもイメージは出来るね。
ならば、伸縮自在のペンキを予め塗っておいて、引っ張れば良さそうな気もする。

有限の体積に対して、無限の表面積が、ガブリエルのラッパだとすると、
有限の面積に対して、無限の外周が、コッホ曲線とも言えるなぁ。

ガブリエルは大天使なので、神様に頼んで、半径1の円状にぐるぐるっと、ホルンのように巻いて貰って、無限の長さを有限の領域に押し込めてもらったら、ペンキも塗れるのではなかろうか。

パラドクスは面白いなぁ。

 

ではでは

 

 


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