同じ形、同じ大きさ、同じ重量の積み木を、同じ向きに積み上げていくとする。
その際、ある横方向の一定方向に、出来るだけずらして置くとすると、一番下の積み木よりもどれだけずらすことが出来るか。
私の苦手な物理学の話しです。
これを中学2年のときに担任(理科教員)に聞かされたのを思い出して書いています。
確かあの時はトランプのようなカードで説明していたように思われる。
皆さんは積み木が何個分の横幅ずらせるかを考えてみてください。
シンキングターイム
答えは無限にずらすことが可能である。
とされている。
考え方は、積み上げるのではなく、一番上の積み木から下方向に考えると解りやすい。
上から1段目、2段目、…、と数えることにする。
1段目の重心G1が、2段目の上面の内側にあれば、1段目は崩れ落ちない。
以降、1段目からn段目を1つの物体と考えた時の重心をG(n)とすると、
重心G(2)が、3段目の上面の内側にあれば、崩れ落ちない。
重心G(3)が、4段目の上面の内側にあれば、崩れ落ちない。
…
重心G(n)が、n+1段目の上面の内側にあれば、崩れ落ちない。
仮に、内側の最低ラインである縁(へり)に、重心G(n)をあわせたとすると、直下の積み木とのズレをDという関数だとして、
積み木の長さをLとするならば、
D(1)=L/2
D(2)=L/4
D(3)=L/6
…
D(n)=L/(2n)
…
のような数列となり、
L/2 Σ{k=1 to ∞} 1/k
と表せる。
等差数列の逆数の和です。
この等差数列の逆数の和は調和級数と呼ばれ、調和級数は発散します。
証明してみましょう。
Σ{k=1 to ∞} 1/k = 1/1 + 1/2 + 1/3 + … + 1/k + … }
最初の1/1を除き、1項、2項、4項、8項、…、2^m項となるようにする。
Σ{k=1 to ∞} 1/k = 1/1 + (1/2) + (1/3 + 1/4) + (1/5 + 1/6 + 1/7 + 1/8) + …
それぞれの括弧内の末項を括弧内の項数倍したものと比べる。
1/1 > 1/2
1/2 = 1/2
1/3 + 1/4 > 1/4 + 1/4 = 2/4 = 1/2
1/5 + 1/6 + 1/7 + 1/8 > 1/8 + 1/8 + 1/8 + 1/8 = 4/8 = 1/2
…
1/(2^m+1) + 1/(2^m+2) + 1/(2^m+3) + … + 1/(2^(m+1)) > 1/2
…
のようになり、
末項が括弧内で一番小さな数であるから、
左辺の和は右辺の和より常に等しいか大きいことは自明である。
右辺は左辺の1/2の無限和よりも大きいので、
Σ{k=1 to ∞} 1/k = ∞
発散するということになります。
さて、どれくらいずらすことが可能かと言えば、無限にずらすことが数学的に証明されました。
ただ、現実問題として考えると、縁に重心が来るという状況はとても不安定であり、縁(ふち)のわずかでも内側に重心が来るようにすることになる。
また、地球という球体の表面という有限なので、無限にずらすということは出来ない。
あくまでも、永遠に平坦で重力が下向きに働く環境であればという条件付きである。
さてさて、何個分ずらすのに何段積み上げればよいのかを計算してみる。
n | Σ{k=1 to n} |
3 | 0.91666666666666666666 |
4 | 1.04166666666666666666 |
30 | 1.99749356546019553525 |
31 | 2.01362259771826005137 |
226 | 2.99998071100097684428 |
227 | 3.00218335417278301168 |
1673 | 3.99994410021533278359 |
1674 | 4.00024278599788953389 |
12366 | 4.99998107396081967172 |
12367 | 5.00002150413790384735 |
91379 | 5.99999605417599899785 |
91380 | 6.00000152583281668224 |
675213 | 6.99999994052072958856 |
675214 | 7.00000068102670250974 |
4989190 | 7.99999994751026449120 |
4989191 | 8.00000004772691284160 |
36865411 | 8.99999998829711698307 |
36865412 | 9.00000000185996554149 |
272400599 | 9.99999999897318916129 |
272400600 | 10.00000000080872109477 |
とりあえず、10個分ずれるところまで、超える直前と直後のkやΣを計算してみました。
ではでは